良い文章を書くための処方箋②

一つ前のブログでは、記事を書くための構成の組み方について書きました。 

 

例えるなら急に大切な人と食事に行くことになったのに、どんな格好をしていけば分からない状態から、とりあえず家にある服を選んだというステップが前回までの内容で、その服の毛玉を取ったりアイロンがけをしたりして見栄えを良くする作業が今回の内容のイメージです。

 

文章も見栄えは大切です。文章の見栄えを良くするために、今回は文章の表現方法や言い回しについて一緒にスキルアップしていきましょう!

 

まずは読み返しましょう

 

声に出して読むことができる環境なら音読し、視覚と聴覚を使ってあなたが構成した文章を読み、内容を頭で理解できるか検証するのです。

 

もし声が出せない環境であれば黙読してください。黙読でも読みづらさや文章の違和感に気づくことはできます。しかし自分自身が書いた文章を読み返してみて、どの部分がどういうふうに変なのか、間違っているのかということはなかなか気づくことができません。

 

ここからは良い文章へとレベルアップするためのチェックポイントを紹介します。

 

重複がないかの確認

 

重複とは文字通り「複数の物事が重なること」です。文章には単語や語尾、文節などさまざまな重複発生ポイントが隠れています。

 

・単語

・文末

・文節

・文型

・段落

 

これが重複発生ポイントであり、登場している順に重複の発見も難しくなっていきます。

 

【単語】

 

「私の家の近所の公園の遊具が新しくなりました。」

 

「私の家の近所にある公園の遊具が新しくなりました。」

 

上の文章には「の」が多用されています。それぞれの修飾関係は間違ってませんが、4つも続くとくどさを感じてしまいます。3つ目の「の」を「にある」に変換すると、「の」の多用が解消されて読みやすいと感じるようになったと思います。

 

【文末】

 

「来週末は部活の最後の定期演奏会があります。部長の私は最後に挨拶をする時間があります。緊張していますが、しっかりと役目を果たす自信があります。」

 

「来週末は部活の最後の定期演奏会です。部長の私は最後に挨拶をします。緊張していますが、しっかりと役目を果たす自信があります。」

 

上の文章のように同じ文末表現が続くのであれば、ほかの表現方法を用いたり、時制を変化したりして文末表現の重複を避けましょう。文章を名詞で終わらせる体言止めは、文章にスパイスが加わりますが使いすぎは注意です。連続して使わないよう心がけましょう。

 

【文節】

 

文節の重複は簡単にいうと文末表現の重複の文中バージョンです。

 

かえって「?」になってしまった方もいるかもしれないのでここでも例文を紹介します。

 

「私は喉が渇いたので、お茶をたくさん飲んだので水筒が空っぽになった。」

「弟は九九の練習をたくさんして、テストで満点を取って、とても喜んでいた。」

 

「私は喉が渇いたので、お茶をたくさん飲んだことによって水筒が空っぽになった。」

「私は喉が渇、お茶をたくさん飲んだので水筒が空っぽになった。」

「弟は九九の練習をたくさんしたので、テストで満点を取ることができ、とても喜んでいた。」

 

「ので」や「て」が一つの文に連続発生してとても読みにくいと感じたと思います。順接や逆説を一文に盛り込むと、発生しやすい現象なので気をつけましょう。二つ以上の文章に分けてもいいですね。表現方法は一つじゃないので、いろいろ探してみると面白いですよ!

 

【文型】

 

中学校の英語の授業で文型について習ったことを覚えていますか。

 

S+V(第一文型)

S+V+C(第二文型)

S+V+O(第三文型)

S+V+O+O(第四文型)

S+V+O+C(第五文型)

(S=主語、V=動詞、C=補語、O=目的語)

 

上の例は英語の文型になりますが、文型とは文章の組み立て方のことをいいます。

 

「昨日はテレビを見ながらポテチを食べていました。今日はヒーヒー言いながら10kmのランニングをしました。」

 

「昨日はテレビを見ながらポテチを食べたので、今日はヒーヒー言いながら10kmのランニングをしました。」

 

韻を踏むという目的で、あえてこういう分の組み立て方をすることもあると思うので、単語や文末、文節に比べると違和感レベルは小さいかもしれません。しかし同じ組み立て方をされた文章がずっと続いては、読者はきっとその文章を単調過ぎてつまらないと感じて最後まで読むことを諦めてしまうでしょう。

 

例文の場合だと、思い切って1つの文章にまとめて重複を避ける方法もあります。

 

体言止めや韻を踏むことは文章のスパイスだという認識にとどめ、多用は避けましょう。良い文章を書く練習をしている段階なら封印してしまってもいいでしょう。

 

【段落】

 

段落はスケールが大きいです。

 

これまでと違って息継ぎなしで読める長さでも、視界に入り切る長さでもありません。

 

特に文章を書くことに慣れてきたころに、段落重複トラップは待ち構えています。

 

「木を見て森を見ず」にならないように、単語や文末にとらわれすぎることなく文章全体にも目を向けて、同じような表現方法になっていないか、文章の書き方が同じような組み立てになっていないかを確認しましょう。

 

時制のコントロール!?

 

時制は基本的に時間軸に合わせた使い方をします。 

  

「明日は風邪を引きました。」

 

上の文章は「明日=未来」「引きました=過去」の表現なので、時制がちぐはぐになってしまいとても違和感を感じます。

 

しかし臨場感やワクワク感を出すために、過去のことを現在形で表したり、未来のことを現在形で表したりすることで、過去や未来のことが今まさに目の前で起こっているような文章にすることができます。

 

「来春、あなたはこの映画で泣く。」

 

上の例文は未来のことを現在形で表しました。「来春、あなたはこの映画で泣くでしょう。」と未来のままの表現ももちろん伝わります。しかし現在形で表した方が事実として捉えることができ、臨場感を感じませんか。「ああ、私はこの映画で泣くんだ」という錯覚に陥るはずです。

 

しかしこれも多用は注意しましょう。時系列が混乱してしまって、内容がよく分からないことになっては本末転倒です。読み返して違和感を感じるのならテクニックの使用は控えましょう。

 

主語と述語は適切か

 

一文が長くなると、主語と述語がちぐはぐな文章が誕生しがちです。

 

『彼女が「美味しいクッキーを焼いたからあげるね」と言ったので、楽しみにしています。』

 

一見内容が伝わりそうな文章ですが、楽しみしているのは誰ですか?

 

『彼女が「美味しいクッキーを焼いたからあげるね」と言ったので、私は楽しみにしています。』

『彼女に「美味しいクッキーを焼いたからあげるね」と言われたので、楽しみにしています。』

 

これなら「彼女にクッキーをもらえることが楽しみな私」が伝わってきますね。

 

日本語は主語を省略しても意味が通じることが往々にしてあります。しかしその場ですぐに補足や説明をすることが難しい文章の場合、主語の省略も避けましょう。

 

文章を書くとき、読み返すとき、この文章の主語は誰(何)か、ということを考えるクセをつけちゃいましょう。

 

たかが読点(、)されど読点(、)

 

「かわいい友達のぬいぐるみ」

 

これも一見意味の通じる分ですが、かわいいのは友達ですか?ぬいぐるみですか?

 

「かわいい友達の、ぬいぐるみ」

 

であればかわいいという形容詞は友達にかかります。かわいいぬいぐるみの意味を表したいのなら

 

「かわいい、友達のぬいぐるみ」

 

としてもいいですし

 

「友達のかわいいぬいぐるみ」

 

といった感じで、形容詞を直前に持ってきてもいいですね。

 

読点とは文の意味に切れ目を示したり、文を読みやすくしたりするための記号です。意味の切れ目や長めの一文には適宜読点を使用しましょう。

 

長すぎる文章は読みにくい

 

一文が長いから読点で区切ればいいや、ということでもありません。読点は万能ですから、あらゆる接続詞のように文と文を繋げることはできます。

 

難しい匙加減ですが、長すぎる文章は一度句点(。)で締めましょう。初めのうちは一文一義の原則に従い、一つの文章に一つの事柄だけを書くことを心がけてみてください。

 

漢字の使い方にも注意しよう

 

パッと見た文章が漢字ばかりだと読むことが億劫に感じませんか?

 

漢字に変換できるからといって、すべて漢字にする必要はありません。

 

「事」「時」「言う」など、本来の漢字の意味と異なる使い方をする場合は、漢字ではなくひらがなを使いましょう。

 

事・・・主に具体的な事柄、実質名詞

時・・・時間そのものを表すとき

言う・・・言葉で表す、述べるとき

 

上記以外の使い方をする場合は、漢字ではなくひらがなを使うのが原則です。

 

固有名詞・数字は間違えない!

 

前回のブログでもお伝えしたとおり、事実と異なることを発信することはご法度です。固有名詞はある一つの事物特有の名称なので、漢字一つの間違いだってあり得ません。

 

あなたの名前が間違えられたら不愉快ですよね。特に固有名詞は名付け親の思いが込められているたった一つの名前なので、間違えないようにしましょう。

 

数字に関しても、「世界一」や「3つの新機能」のように、インパクトを与えたり具体性を表現したりできます。「史上初」や「最速」「最高峰」などの、一番の意味を表す単語も同様です。

 

こういった表現をするときは、必ず裏を取りましょう。せっかく良い文章が書けてもデータに誤りがあれば水の泡ですので、固有名詞や数字には敏感なセンサーを作動させておくことが大切です。

 

例文が多く内容も長くなりましたが、良い文章へとブラッシュアップするための大切なチェックポイントばかりです。一文一文誤りや違和感がないかを確認し、良い文章へと仕上げていきたいですね。

 

一番最初の例え話に戻りますが、今回は衣類の毛玉取りとアイロンがけまで行いました。次回はアクセサリーや小物を使って、大切な人と食事に行くためにオシャレ度を高めましょう!